2013年5月3日金曜日

西陣織に織込まれたフランスのハヤブサ―「龍村平藏『時』を織る」展

 先週に続き、昨日もテキスタイルの美術展へ行った。日本橋高島屋で開催中の「龍村平藏『時』を織る」展 だ。西陣の老舗、龍村美術織物の四代にわたる作品展だが、一般的な「西陣織」のイメージとは異なる異国趣味の作品もあり、「ちょっと面白そう」と仕事帰りに行った。
祇園祭の山鉾を飾る豪華な布、懸想品を観てブッとんだ。ヨーロッパのタペストリーそのものだったので。解説によると聖書の物語を織り出したベルギー製のタペストリーの複製で、オランダの東インド会社が徳川将軍に献上したタペストリーが、どういう経緯か京都へ流れて「貴重な舶来品」として山鉾を飾り、それを日本の織物の技術で復元した作品だった。その横にはラファエロの原画による騎士の肖像の織物が展示され、そのまた横には先週観た「貴婦人と一角獣」のタペストリーの背景の千花文様(ミル・フルール)とハヤブサを青地に織り出した織物()があり、それも江戸時代の作品の復元だった。中世フランスのタペストリーの絵柄が江戸時代の織物の手本になっていたのだ。
 江戸時代にベトナムやヨーロッパの陶磁器が茶人の間で珍重されていたのは知っていたが、織物も同じだったのだ。絵や音楽は言葉の壁を乗り越えてダイレクトに心に響くから、良いものは世界中に普及するらしい。
 その他、古代裂の復元、中国やペルシア、オランダ、北欧の風物のデザインもあった。刺繍ではないかと思う繊細な絵柄で、そのデザインを活かした着物や帯も展示されていた。それは着物というより美術品だった。昔の御殿女中や上流婦人、一流の芸者が着ていた、技術の粋を凝らした着物と、日常着としての着物は別物だ。一流の料亭の料理と家庭のお惣菜が次元の違う物であるように。

 最近、服装や服の手入れがぞんざいになっていたのを反省し、今日は衣類の手入れに重点を置いた。ふだんの休日は食べるか料理するかで1日が終わってしまうのだが。