金曜日にBunkamura のシャヴァンヌ展へ行った。彼の絵は好きでもなければ嫌いでもない、というのが正直な感想。私にとっては、歴史的な文脈において初めて価値が分かる作品だ。写実的で立体的なアカデミックな絵が全盛の時代に、中世を想わせる平面的な構成と淡い筆致の独特の画風は斬新で、ピカソやスーラといった革新的な画家達に強い影響を与えたこと、普仏戦争で疲弊した時代に古代の理想郷を描いてフランス人に希望を与えた、ということなどを知って存在意義が分かる画家だ。出展作品の「聖ジュヌヴィエーヴの幼少期」は島根県立美術館の所蔵だが、一昨年、この美術館に行った時に観た記憶がない。企画展の日本画の鑑賞に意識が集中して常設展はついでに観た感じなので、たんに記憶にないだけなのかもしれない。いい絵なら覚えているはずだから、記憶にないのはやはり私の好みではないのだ。
今朝のEテレの『日曜美術館』で、作家でキュレーターの原田マハ氏が、シャヴァンヌの「幻想」を、「いま観ても古くない、そこがすごい」と言っていたが、確かにその点は優れている。およそ150年前の作品なのに、「現代作家が描きました」と言われても信じてしまう。普遍的な美しさ、理想を追い求め、キャンバスに固定するのが彼の画業だったのだろう。どのグループにも属さず独自の画風を切り開き、生前から評価された画家として、偉大な芸術家ではあると思う。出展作品の中で一番気に入ったのは「海辺の乙女たち」(図)だ。中世風の長い金髪をおろした、ニンフと人間の中間的な感じの乙女達の半裸像だ。
これは今年に入って初めての美術館行きだった。先月は思いがけない用事が重なって美術館に行きそびれ、ちょっと欲求不満気味だった。