昨日、ほぼ二月ぶりに美術展へ行きました。国立西洋美術館の「ヴィルヘルム・ハンマースホイ 静かなる詩情」展です。感銘を受けてその前で立ち尽くすような絵こそなかったものの、久し振りに美術館へ行き、目の保養をしたことで、気づかぬうちに欠けていた心のジグソーパズルの一片がピタッとはまったような、大切な何かを取り戻した気がしました。
雨天の平日のわりには閲覧者が多く、これで晴天の休日だったらどんなに混んでいたかと思います。日本で知名度が高かったとも思えないのですが、小津安二郎的な静謐でストイックな画風が受けるのでしょうか。
ハンマースホイは19世紀後半から20世紀始めのデンマークの画家で、画面の静謐さは誰もがフェルメールを連想しますが、フェルメールの温かみはありません。1枚の絵に複数の人物が描かれていても、その人物同士をつなぐ心の輪がなく、てんでばらばらな印象を受け、観ていてあまり幸福な気持ちにはなれません。彼の他者を観る眼差しや、そこから推測される内弁慶らしい内面性が好きになれない私としては、人物のいない一連の室内画が良かったです。一番いいと思ったのは「ゲントフテ湖、天気雨」でした。彼がよく避暑をしたという避暑地の湖に、お天気雨が降っている絵で、空の広がりと灰白色の雲の微妙な色彩、無人の湖畔の木立、雨に打たれて鈍くきらめく湖面に、しばし見入って疲れを休めました。この日は心身ともにやや疲れており、その疲れを癒すべく、静かな絵を観に来たのです。
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