2014年1月12日日曜日

ナタリー・エニック氏の講演

 今年最初の金曜のアフター5は、ナタリー・エニック氏の講演を聴いた。社会学者で、フランス国立科学研究センターの研究員で、演題は「芸術家の誕生-フランス古典主義時代の画家と社会-」、場所は恵比寿の日仏会館だ。画家や彫刻家がどのように「職人」から「芸術家」になったのかという面白そうな話で、恵比寿は近いし(参加費は無料だし)、と軽い気持ちで出かけたが、久し振りに聴講中の居眠りをしてしまった。内容は素晴らしかったが、私にはちょっと難し過ぎた。美術史的な話かと思っていたのだが、社会学的な観点から見た芸術家全般の話だった。ラファエロなど具体的な画家の名前が挙がると関心のテンションがぐっと上がるが、「この時代の画家たち」という集合名詞になると関心が薄れる。関心の満ち干きの繰り返しで関心の薄い話題が続くとふっと1週間分の疲れを感じ、眠気に襲われた。
 私は同時通訳で聴いたが、質疑応答の際の4名の質問者はみなフランス語だった。そのうちの1人はフランス人らしかったが。一番長く質問した方は「たかしな先生」と呼ばれていた。美術史家の高階秀爾氏で、エニック氏とフランス語で美術に付いて論じ合っていた。
 森茉莉がエッセイで父、森鴎外とその友人である明治の知識人達との交際に付いて書いているが、こんな会話を聞きながら育ったのだろうか。本物のインテリは、自分が「知識人」だとは自覚していないように見える。生まれながらに裕福な人々が「自分は金持ちだ」とは思っていないように-生まれた時から裕福で、友人・知人もみな裕福だから、それが当たり前だと思っているのだ。
 自分の無学ぶりを改めて思い知らされた一夜だった。「無知の知」に気が付いた、それがこの夜の最大の収穫だった。

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