2010年7月6日火曜日

カポディモンテ美術館展


今日は国立西洋美術館のカポディモンテ美術館展へ行った。ナポリのカポディモンテ美術館の、ルネッサンスからバロック期のイタリア美術の作品展だ。ローマ法王となったアレッサンドロ・ファルネーゼが始めたコレクションが土台となっているためか、宗教画が主体のお行儀のいい絵ばかりだった。ファルネーゼ一族の勢力誇示の一環として、その教養や財力の高さを示すために始められたコレクションなので、聖職者や貴族達に安心して見せられるような品のいい題材や宗教画ばかりなので、印象派以降の個性や主張を押し出した作品に馴れていると、大人しいというか物足りない感じもした。加えてファルネーゼ家の領地だったパルマ出身の画家を贔屓にしていたので、イタリアの郷土色を濃く感じさせた。
そうして宮殿を飾るべく収集・発注された絵はサイズが大きく、描かれた人物も画面一杯に躍動感のあるポーズを取っているので、この絵を展示するには絵の迫力に負けない広さと華麗さのある空間が必要だという感じがして、四角く白い美術館の展示室がいかにも狭苦しく感じられた。なんだか動物園の虎を想わせた。鉄格子の向うをひっきりなしに右左に行き往している虎を見た時、かつて彼の周りに広がっていた広大な山野が浮かび、狭苦しい檻の中に囚われた獣の焦燥が伝わって来たものだ。

そう言えば昨日、『パンダの飼い方』(白輪剛史著、PHP研究所)と言う本を見かけた。パンダやライオンなど、個人では飼えないか飼うのが難しい動物の飼育や購入の方法について書かれた物だ。大方の読者にとっては、「飼えないのは分かっているけど、もし飼えたら…」という空想の羽を広げて楽しむ本だろう。

同時開催の「オノレ・ドーミエ版画展―『カリカチュール』と初期の政治諷刺画―」へも行ったが、権力者への風刺は当時の人々には痛烈に面白かったろうが、1半世紀が経ち、当時の社会状況を知らない私が見てもピンと来ない。まるで気の抜けたコーラだ。学生時代にホット・コーラと言う飲み物があると聞いて、コーラを鍋で温めて飲んでみたら、たんなる極甘の砂糖水だった。彼の風刺画で今見ても面白いのは、エゴや自惚れと言った人間の普遍的な悪癖を嘲笑った作品だろう。

それと同じでキリスト教の宗教画は、仏教の文化圏で育ち、かつ無神論者の私には何かピンと来ないのだ。それよりは美しい若者や子どもを描いた、誰にでも分かる作品のほうに惹かれた。と言うわけで、ポスターピースのパルミジャニーノ作「貴婦人の肖像」(上図)が一番いいと思った。パルトロメオ・スケドーニの「キューピッド」も、幼児のふっくらした身体つきの愛らしさがうまく表現されていて良かった。

美術鑑賞の後はアメ屋横丁で買い物をした。例によって食材ばかりだ。実は絵を観ながら、夕食の献立を考えていた。今日はアレクサンドロス大王の誕生日なので(それを口実に)ご馳走風にしたいと思っていたのだ。と言うわけで、晩餐(?)はイカスミのスパゲティ、トマトとモッツァレラチーズのサラダ、柘榴のジュース、白ワイン、レモンタルト、米国産と日本産の桜ん坊、紅茶だった。イカスミのスパゲティを食べたのは初めてだが、期待していたほどの味でもなかった。だが全体としては満足した、美味しいご馳走だった。
ちなみに明日はシャガールの誕生日だ。おまけに七夕だ。この調子でいくと、一年中ご馳走の口実には事欠かない。

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