2008年11月8日土曜日

『バーネット探偵社』を読み返して

  思うように英語が上達しないため、このところ英語に食傷気味で、英語やその翻訳物以外の作品を読むのが気楽で、楽しく感じます。そこで中学校以来、久しぶりに『バーネット探偵社―ルパン傑作集〈7〉』 (新潮文庫)を読みました。アルセーヌ・ルパンがジム・バーネットと名乗って調査費無料の探偵事務所を開き、事件を解決すると同時に、金持ちや後ろ暗いところのある人物からピンハネをする、というミステリー短編集です。中学生時代はルパン・ファンの友人と、ホームズ・ファンの私とで中傷合戦をしたものですが、この本を初めて読んだのは、この友人から借りてでした。
  今回、読み返して、大まかにでも覚えていたのは「したたる水滴」と「偶然が奇跡を作る」の二編でした。前者は、財産目当てに結婚した妻への夫の復讐を、ルパンが逆手に取って素晴らしい宝石を手に入れ、後者は気位の高い伯爵令嬢が、加害者から贈られた小切手を破るのを見越して、予め期限の切れた小切手と掏り替え、十万フランを懐に入れるという結末です。心理的な推理という面でも、恋愛沙汰が飛び交っている点でも、フランス的なミステリーです。
  中学生の時、気が付かなかったのは、フォリー・ベルジェール座の話が出ていたことでした。モーパッサンの『ベラミ』にも出てくる、有名なミュージック・ホールです。「白手袋・・・・・・白いゲートル」で、フォリー・ベルジェールのアクロバット歌手とルパンは恋に落ち、事件解決後、二人は旅にでます。旅行中、ルパンは事務所にこんな貼り紙をしておきます。
  「恋愛中につき休業。蜜月後再開。」

0 件のコメント: