2008年8月3日日曜日

フェルメール展


 昨日は、東京都美術館のフェルメール展へ行きました。初日のせいか、午前中から混んでいました。フェルメールの作品には子どもがほとんど描かれいていないが、実際には12人の子どもがいたという解説を読んで、彼の作品は実生活の反転画でないかと思いました。1ダースもの子どもがいたら家の中が静かになる時は一時だってなかったはずで、彼の作品に漂う静謐さは、実生活の裏返しの願望を描いたものではないかと感じられました。
 フェルメール展でいつもがっかりするのは、フェルメール自身の作品が少ないことです。現存作品が三十数点で、それが世界中の美術館に散っているとあっては仕方のないことですが。その点、今回の企画展はまあ良かったです。40点の出展作品中、8点がフェルメールでした。今まで見たことのなかった構図や題材の作品もありましたが、一番いいと思ったのは上の「リュートを調弦する女」です。窓際の机の前で女性がリュートを調弦している、「これぞフェルメール」という定番の構図です。

 その後、ブリティシュ・カウンシルへ行き、帰りにクリスティの『無実はさいなむ』(ハヤカワ文庫)を買いました。大筋は『スタイルズ荘の怪事件』に似ています。慈善家妻夫と、その養女と養子で構成された不自然な大家族があり、その女家長が殺害される。犯人とされた養子の一人が獄死した後、彼の無実を信じる証人が現れて捜索が再開される、というストーリーです。まぁ、意外な結末と言えましょうか。話の展開より、登場人物の個性と心理描写が面白かったです。養女の一人、ヘクターの台詞は真実をついていて、ハッとさせられました。「わたしって、とても弱い性格なの。いつでも一番手っとり早いことをするの」

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